02*
惹かれるもの
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予定していたアルファードの家に帰る訳にはいかなくなった――シリウスに対し。 うちに来たらいいと一番に名乗り出たのは、だった。 「元々俺の家にまた泊まろうって話だったし、それが初日からでも問題ない」 「いや、まあ、そうだけど、でもそれは皆で泊まるから問題ないって訳で」 の申し出にシリウスはしどろもどろで応える。それに対しは、シリウスのその様子が理解出来ず小首を傾げる。 そしてその態度を見て大体の事情を察した一同は、やにやと見守る。 「さーて、は家に帰ってるのかなー? 帰ってなかったら、二人っきりだねぇ」 「さんが帰ってたとしても、地獄しか待ってなさそうだね」 卒業式のあと、が素直に家に帰ってきているのかあの儘何処かへ行ってしまっているのか、それは誰にも判らない。 シリウスとしても、がいない方がいいような、いてくれた方がいいようなと言う葛藤があった。 がいなければと――と二人きり。がいれば――家で世話になると話した途端、何を言われ何をされるか判らない。 「じぇ、ジェームズ、お前んち大丈夫だったよな!」 「いやー、こうなると、僕の家はやめておいた方がいいと思うね。ポッター家にってなると、余計確執が出来るし」 他に道はと閃いたシリウスだったが、ジェームズの苦笑交じりの言葉に項垂れる。 冗談――は少し入っているかも知れないが、ジェームズの指摘は尤もである。ポッター家は、純血主義の名家に相対するマグル友好派の中でも有名な名家の一つだ。 今あの両親を刺激するのはよくない。 そう言った問題を鑑みても、魔法界出身であり純血主義にもマグル有効派や名家にも属さないの家は、最適なのである。 「まあ叔父さんちに帰るかは、叔父さんに手紙を書いて状況を窺ってからでもいいんじゃないかな。その間は、の家にって事で」 「その間が短期間で終わってくれるといいんだがな……」 結局、の提案を受け入れる他なかった。 シリウスはの様子をちらりと見てみるが、に――もしかすると二人きりになるかも知れないと言う事の意味を理解した様子は見受けられなかった。 学校で、特に取り乱した様子もなく三年間として――男として過ごしてきたのだから、今更突然自覚出来る訳でもなのか、とシリウスは分析する。 秘密を知らされた側であるシリウスからすると、突然知らされた事実は意識せざるを得ないのだが、まさか此処まで当人がのんびりしているとは。 「ああ、着いちまった……」 他の皆と別れやってきたの屋敷を前に、シリウスはそう恐ろしさを零す。 が帰っているかどうか。そしてに事情を話した時、自分がどうなるか。それを考えるだけで、足が止まる。 尤もが今帰っていなくても、いつ帰ってくるのか、と逆に落ち着かずと言う状況になるだけだろうが。 一先ず――いつまでも大荷物を傍に置いて入り口に立っている訳にもいかない為、意を決してシリウスは敷居を跨いだ。 通りから見える風景から一変する。 広い庭で四方を囲んだ大きな屋敷。 魔法界の旧家なら同等くらいの屋敷に住む者も多い為、家の大きさに対し驚く事は余りないが、広範囲の複雑な結界が張られているのであろう事を考えると矢張り驚く。 「ただいまー」 そう言いながら玄関を開けるに続いて家へ入る。 の声は玄関ホールに響いただけで、それに対する声は返ってこなかった。 「兄貴、いないのかな」 「いや、いるな。読書タイムだ」 「タイミング悪いなあ」 の疑問に、フェイがはっきりと返す。 は一度読書タイムに入ると、本人が読書をやめるまで邪魔出来ない状態となる。邪魔をすれば、最愛の妹と言えど命の危険に晒される程である。 「取り敢えず、荷物を置きに行こう。シリウスは前に泊まった部屋で大丈夫だから」 「あ、ああ」 に促されて、キャリーケースを魔法で浮かせて二階まで運んだ。 一昨年泊まらせて貰った部屋に入れば、部屋は綺麗に片付いていた。埃を被っていると言う事もない。 屋敷しもべ妖精は雇っていないし、が卒業後すぐ帰ってきたであろうとしても、此処まで使っていない部屋を綺麗にしているものだろうか。 そんな疑問を抱きながら、シリウスは適当にキャリーケースを置くと、廊下に出た。 が帰ってきている以上、顔を合わせるまで落ち着けない。 が出てきたら、一先ずの行動に倣おう――と思い、部屋の外で待った。数分後、が部屋から出てきた。 「あれ、待ってたのか。ごめん」 部屋の外で待っていたシリウスを見つけたは、苦笑を浮かべて謝った。 だがシリウスはそれに対し、返す言葉を忘れた。 「髪……下ろしたのか」 「ああ、うん。気持ちの切り替えってところ」 「切り替え?」 部屋から出てきたは、部屋に入る前までと違い―― 一つに括っていた髪を下ろしていた。 男なのに何故伸ばしているのだろうと思っていたが、女だからかと今更ながらに納得する。そしてただ髪を下ろしただけにも拘らず、先程より増した女らしさに、シリウスは言葉を失っていた。 「家にいる間はで、学校にいる間はだから」 確かには言っていた。 ホグワーツにいる時、自分はなのだと。だから初めてフェイにと呼ばれた時違うと思ったにも拘らず、ホグワーツ入学許可書を見て何の抵抗も疑問も抱かなかったのだと。 「だから今からは、って呼んで」 「……判った」 「まあ、髪型以外に変える事なんてないんだけどな。口調もすっかり癖になっちゃったし、スカートなんて元々持ってないし」 恥ずかしそうに笑う――を見て、シリウスはただただぼーっと見るしかなかった。 そして数秒後我に返ったシリウスは、改めて、自分の気持ちを自覚しなければならないのだった。 ( 後書き ) 夢主はポニーテールと言うより、一本に結んで垂らしてるだけ。 なので一本に括ってもあんまり女の子らしさが 出ないんです、と言う説得力のない主張。 長髪もいいですが、肩にかかる長さで 切り揃えられてる感じの髪型も好きです。 |