04*
神様は僕にやさしくない
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夏休みが終わり、シリウスがの家で世話になるようになってから数日が経った。 に遣いを命じられ、と共にマグルのスーパーへ行く事もあったが、魔法使いに会わない程外は予想以上に平和だった。 「おは、よう……兄貴」 「ん、おはようさん」 「……おはようございます」 「モーニン。お前に手紙だ」 毎朝キッチンに行くと、律儀に朝食を作っているがいる事にシリウスは中々慣れなかった。 起きてきたものの眠そうなに対し、は何でもないように挨拶を返しながらテーブルに朝食を並べるが、緊張した様子でキッチンに入ってきたシリウスに対しては、グッドをつけたくないと言うような調子ながらも挨拶を返してくる。 いつ甘い料理を出されるのだろうと怯えている中、その日は朝食と共に手紙を渡された。 「……ゼーレさんから……? 何で俺に……」 テーブルにつき、出されたコーヒーを飲みながら、手紙の宛先人を見ればゼーレ・ザインの名前。親しい相手ではあるが、手紙を貰うような間柄ではない。 コーヒーをテーブルに置くと、どんな内容なのだろうと考えながら封を切る。 その間、はテーブルについておきながら未だに舟を漕いで、は気にならないと言う様子で朝食を食べ始めている。 「……マルフォイ家のパーティの話だ。でも何でゼーレさんから……」 「一応アイツも旧家の出身だからな。純血主義の家柄の中で、一目置かれている家らしい」 確かにキングズ・クロス駅でシリウスの両親がザインの名に驚いていた。 ゼーレ自身ザイン家の跡取りだそうなので、尚更純血主義者達の間の話に詳しいのだろう。しかしよく判らないのは――。 「アイツら、詳細は梟便で送るとか言ってたのに、ゼーレさんからの連絡の方が早いのかよ……」 マルフォイ家のパーティは、ルシウスの卒業に合わせて開かれるので事前に日程は決まっていた可能性が高く、加えてあの興奮具合だったので、翌日には送り付けられると思って身構えていたにも拘らず、数日待っても梟便がくる事はなく、何なんだアイツら、と不満に思い始めていたところである。 しかも、シリウスにパーティへ出ろと命令している両親より早く、あの時仲裁に入ったゼーレからの手紙を先に受け取り詳細を知るとは何ともちぐはぐだ。しかもパーティの予定日は、一週間後とそれなりに迫っている。 「悪意ある手紙は届かないようになってる」 「え……」 愚痴に近い疑問を零したシリウスに、答を提示したのはだった。 から反応が貰えると思っていなかった事と、信じられない話で唖然とした。悪意のある手紙が届かないようになっている――とは、どう言う事なのか。 「この家には、綺麗に保つ魔法から、マグルを寄せ付けない魔法、マグルには屋敷に見えない魔法、怪しい奴に敷居を跨がせない魔法、色々かかっててな。その防犯の一つだ。吠えメールとか、そこら辺も届かない」 そう気だるげに説明しながら、はトーストを口にする。 確かに吠えメールのように、受け取った瞬間何かが発生する魔法がかけられている手紙を受け取るのは危険だが、そんな事が――可能なのか。 因みに、舟を漕いでいたはオレンジジュースを飲んで少しは意識が浮上してきたのか、のろのろと眠そうな仕草でトーストをちぎり始めた。 シリウスとの話は聞いているのか今一判らない。 「……それ、さんと……がかけたんですか?」 「流石にまだそんな技術ねーよ。此処はアルバスの爺さんが持ってる屋敷の一つで、元々そう言う魔法がかかってた。爺さんがかけたのかは知らねぇけど」 まさか――と思って尋ねてみれば、流石にそんな事はなかった。だが二人の子供が暮らすにしては矢鱈大きい立派な家だと思っていたら、ダンブルドアの所有物だったとは。が以前、そんな話をしていたようなしていなかったようなと考える。 確かに書斎の書物は、一応どんな物があるのかと見てみた時、変身術系統が多かったが、ダンブルドアが集めた蔵書と言うなら何となく納得が出来た。も、家にある本を読んでアニメーガスになる知識と技術を身につけたと言っていた。 「で、マルフォイ家のパーティには行くのか?」 「行きたくないですけど……行かないと、俺や達に何をするか判らない連中なので……」 従うのは癪だが――人質を取られたなら従う他ない。 抗う術、能力を持っていれば従わない選択も取れるが、まだ学生の身では、そんな技術はなくまだまだ頼りない。 「確かに、今は従って穏便に済ませた方がいいだろうな。ま、ゼーレの奴も出るんだ、助けてはくれるだろうさ。そのつもりでお前に手紙を出してる筈だ」 「はい、手紙にはその旨も書いてくれていました」 ゼーレは中々掴みどころがないが、スリザリンに属していた者にしてはとても信頼が出来る。結局、とゼーレは何故スリザリンなのか判らない程だ。 恐らくゼーレの場合は、先程が純血主義者の中でも一目置かれている旧家だと言っていたので、血による組み分けだろうと思われる。旧家ではあるが、家の人間自体は純血主義者らしくない者達らしい事は、駅での両親の反応から窺い知れた。 「ただ一つ……問題が」 に話すべきか――迷う。しかしどちらにせよ、には相談しなければならない。だがに相談するより、の方が適切な答えをくれそうな気がする。 口や態度は威嚇的だが、こうして話に乗ってくれる時は乗ってくれる。 いやそもそも――ゼーレの手紙に書かれている事を実行するならば、確実にの許可を取らなければならない。 「えっと……ダンスパーティ……する、らしいです」 「ふーん。ま、旧家の貴族らしいな」 主役は当然ルシウス・マルフォイで、婚約発表なりを兼ねて婚約者とダンスをするのだろう。ダンスパーティをするのであれば、当然周りの出席者もある程度ダンスに入らなければ引き立たない。 顔が整っているシリウスなら、出席すれば当然のように色々な女子からダンスをとせがまれるだろう。 ただでさえ出席自体が厭で、しかも当然の如く全員が純血主義者である中、悠長にダンスなど踊れる筈がない。だがそこで寄ってきた女子を無碍にすれば、余計な混乱と騒ぎを起こし、引いては両親が達に制裁を――となりかねない。 パーティに出るだけで、騒ぎを起こしても安全が保障される道理はない。だから出席し、かつ穏便に終えなければならないのだ。 「事前に相手を用意しておいて、その相手と踊ったあと暇を告げる流れなら、ある程度体裁は取れるだろう――と、ゼーレさんは手紙に書いてくれています」 踊る相手がいない場合、女子に囲まれ誰と踊るかと言う選択を迫られる。 そうなった場合、その中から選ぶと一人だけで済ます、と言う事が許されない空気になる。そもそも見知らぬ女子の中から一人を選べる訳がない。 「それで……」 「ちゃんを相手に連れて行けばいいんじゃないかなって、思うんだよね」 「うわっ」 「え?」 言わなければ――とシリウスが意を決し、口を開いたところで、唐突にその手紙の主がダイニングの入り口から現れ、シリウスは驚いた。まだ眠そうにうつらうつらしていたも、それは流石に覚醒せざるを得なかったのか、現れたゼーレを目を見開いて見やった。 唯一だけは、無言で親友を見ている。 「久し振りに来たよ。手紙が着く頃かなって思って」 「お前の事だからな、直接来る可能性も考えながら聞いてたところだ」 「流石、判ってるねぇ」 用意周到なゼーレらしい行動、と言う事らしい。が驚かなったのは、流石長年変わり者同士親友を務めているだけある結果か。 は立ち上がると、コーヒーを温め始めた。来た事に動じなかった以上に、やけに手馴れている流れだ。 「ちゃんがくるまでは、夏休み中ちょこちょこお邪魔してたんだ」 「一定期間滞在、ならまだ判るが、予告なしに七月下旬に来て泊まらずにすぐ帰ったと思ったら、また予告なしに八月中旬に来たり、中々に自由奔放なんだよコイツ」 「意外……」 すっかり目が覚めたは、開いていた席に座るゼーレをまじまじ見ながらの説明に目を丸める。 が突然の滞在者が来ても夕食を抜かりなく準備出来ていたのは、此処ら辺の経験があったからだろうか。 「だから勝手知ったる、と言う事で勝手に入らせて貰ったよ。手紙にも行くって書いてあったでしょ」 「……一番最後までまだ読んでなかったです……」 指摘されて手紙を見直してみれば、一番最後に小さく追伸で、この手紙が着く頃にそっちに行く、と書かれていた。 しかしシリウスあての手紙にそう書かれても、家主ではないので、勝手に入る許可を取って置いた事にはならないと思うのだが。 とは言え、家主のはコーヒーの準備に入る程受け入れているので、問題はないのだろう。 「えっとそれで……ごめん、俺が何だって言う話だったっけ……?」 ゼーレがくるまでうつらうつらしていたは、当然の如くシリウスとの話も耳に入っていなったようで、申し訳なさげにしつつ、改めての説明をお願いしてきた。 ゼーレが来た事で改めて詳しい説明を交えて貰えるようになったので、シリウスは改めて、に説明をする事にした。 ( 後書き ) 中々に話が強引ですが(苦笑) 日常になると兄貴さんの方が割と冷静で常識人ですね。 不機嫌ながらも淡々と最低限己の仕事はこなす、と言うようなタイプです。 寧ろ機嫌がいいような場面になるとぶっ飛ばすので、そこら辺のふり幅が酷くて 周りが振り回されて敬遠される感じでしょうか。 だから変人扱いされてもモテるし、信頼される訳です(親馬鹿) 逆にゼーレさんは、はいこれ、と言ってにこにこ笑いながら、 相手にハードルの高い課題を課すタイプ。 無理難題ではなく、頑張って頑張ってちゃんとやれば成功出来るような課題を。 だから今回シリウスには、勇気を振り絞って 兄貴さんに告げられるか、と言うような課題を与えてる訳ですね(笑) つまり本当の鬼畜はゼーレさんと言う事です。 |