07*
はじまりは何度でも姿を変える

 パーティの――当日、朝。
 の屋敷には、ゼーレと――アメリアが来ていた。


「アメリアは着替えの手伝いとメイク役。あ、僕のパートナーとしては連れて行かないよ。グリフィンドール生だし」


 そう言って、朝アメリアを連れてきたゼーレは説明した。
 メイク役と言うのは置いておいて、ダンスパーティのパートナーとして連れて行くのかと思ったら否定され、そこに若干驚いた。とは言え、理由にはなるほど、と思うしかないものだったが。
 ゼーレはシリウスと違って、ダンスに頻繁に誘われるタイプではなく大丈夫なのだろう。


「まさか……いえ、をこの手でメイク出来る日がくるなんて思わなかったわ……!」

ちゃんって判らないくらいにお願い」

「それは難しいわね……この子の場合、元々の顔が整ってるから濃いメイク似合わないのよね……まあ事情が事情だし、最善を尽くすわ」


 そう言いながら、アメリアはじっとを見つめた。は視線に耐えられず、目を逸らしてしまう。
 だがアメリアは、気にせずじっとを見つめメイクのプランを立てていた。


「あ、髪の毛の色は変えた方がいいかしら?」

「そうだね、極力連想するものがない方がいいかな。かつ、目立たないように」

「となると……黒は目立つわよね」

「ブラックと揃うと尚更だね。赤髪もウィーズリー家を連想させちゃうから駄目かな」


 英国で黒髪は珍しい。その黒髪をシリウスが持っているので、シリウスの相手も黒髪となると印象をより強くしてしまう。
 の地毛は金髪で、ルシウス・マルフォイの髪の色はプラチナ・ブロンド。の金髪より更に白に近い――白金だが、それでも主役に似た色では言いがかりをつけられる要素にもなりかねない。
 そして赤髪は、魔法界で赤髪と言えばウィーズリー家を真っ先に思い浮かべられる程、その存在が浸透している。ウィーズリー家は今までグリフィンドール生を輩出してきた家系である為、当然純血主義者の集まりに火種を持っていくのはご法度だ。


「ブラウン、茶髪にしましょう」

「ああ、いいと思うよ」


 考えた末に、最も無難なブラウンに落ち着いた。目立たないようにと言うオーダーなので、ダークブラウンがいいだろうかと考える。
 ――と言う事である程度の方針が決まったところで。
 

「じゃあメイクと着替えに行きましょう」

「お、お手柔らかにお願いします……」


 そうしては、アメリアと共に自室へ籠った。
 ダイニングには、暇そうにしていると楽しげにしているゼーレと、眉間に皺を寄せているシリウスが残った。
 シリウスはフェイ伝にアルファードから借りたタキシードを手に持ちつつ、矢張り行きたくない気持ちでいっぱいになっていた。


「じゃあ君も着替えて。髪へのワックスは僕がやろう」

「……判りました」


 とは言え、子供のように感情で突っぱねる訳にはいかないのが現実だ。
 達に今後危険が及ぶかもしれない――それを考えると、我慢して出席しなければならないと言う気持ちが浮かび上がる。尤も、これから同伴してくれるには、もしかするとそれ以上の危険を与えてしまうかも知れない――訳だが。
 一先ずシリウスも割り当てられている自室でタキシードに着替えると、リビングへ戻ってきて、同じくタキシードに着替えたゼーレに風呂場へ連れていかれ、ワックスでオールバックに整えて貰った。
 

「やあ、流石イケメンだねえ」

「ふーん、馬子にも衣裳ってやつだな」

「それは流石にひねくれ過ぎた感想だと思うよ、


 オールバックにせずとも顔が整っているのでタキシードを着ただけで様になっていたが、オールバックにする事でより一層、凛々しさが増していた。
 をダンスパートナーとして連れていかれる事に物凄く不満で仕方ないからは、嫌味を投げられる。


「……の方はまだなんですね」

「女の子は支度に時間かかっちゃうからねー。ドレス着るのも一苦労だろうし。あ、ちゃん、ヒール履く練習してた?」

「一応な。でも練習して慣れたにしろ、走るのは難しいだろ」

「ダンス用シューズだから、普通の物よりは丈夫だってお店の人は言ってたけど。まあヒール以前に、ドレスで走るって言うのもねえ」


 ドレスを着るなら当然、ハイヒールの靴になる。一年の殆どをホグワーツで過ごすが、当然学校でヒールのある靴を履く訳がない。
 そもそも男装をしている、と言う事を除いても。


「ブラック少年はダンス踊れるの?」

「子供の頃、一応叩き込まれたので。あ……って踊れませんよね……」

「どうだろうねえ。記憶的には当然踊った事のある記憶はないだろうけど、もしかすると、そのない記憶の間で体が覚えてるかも知れない」


 魔法界は旧家が多く、特に純血主義の家では今回のように当主を引き継いだり婚約発表をしたりする場で、ダンスパーティが催される事が多い。その為、旧家の出であるシリウスは、物心ついた頃から叩き込まれたのである。
 だがは記憶喪失故に、出自が判らない。


「――お待たせ、出来たわよ!」


 そうこうしている内に、リビングの扉を開けて嬉々とした様子でアメリアが入ってきた。
 がそのあとに入ってくるのだろうか――とドキドキしながらシリウスは待ったが、一分待ってもは現れなかった。


「えっと……ちゃんは?」

「今頑張って階段を下りてきているところね」


 どうしたのだろうと同じく思ったゼーレがアメリアに問えば、振り返り廊下の方を覗いたアメリアは、至って普通かのようにそう言った。
 どうやら待たずに先に来たらしい。
 
 
「時間も限られてるし、ちゃんにこっちに来て貰うより僕らから行こう」

「あ……はい」


 立ち上がったゼーレのあとに、戸惑いながらシリウスも続いた。
 慣れないドレスと慣れないヒールで大丈夫なのだろうかと心配しながら玄関へ向かえば――そこには、予想通り慣れないドレスとヒールでそろりそろりと降りてくるの姿があった。
 だがただがいたと言う訳では当然なく、初めて見る着飾ったその姿に、シリウスは言葉を失った。
 
 
「わー流石、似合ってるねぇ。何処かのお姫様みたいだ」

「そんな事言わないで下さいよ……凄い恥ずかしいんですから……」

「えー? でもそんな感じだよ? ねえブラック少年」


 ぼーっと見惚れている間には漸く階段の下までやってきて、ゼーレとシリウスの前にやってきた。
 髪の毛は金髪を隠す為に茶色に染められ、シリウスにはよく判らないが化粧もされていて普段とは違う印象だ。だが矢張り元が整っているので、だと言われればだと判る。
 ドレスは黒に近い青紫。この色ならそう目立たないだろう。
 

「えっとその……似合ってて……綺麗……だと、思う……」

「あ、ありがとう……」


 一年程前まで男だと思っていた――の、女性らしい姿を見てどう声をかければいいのか、シリウスは判らずテンプレのような感想を口にする事しか出来なかった。
 そうしてシリウス達は、ゼーレに連れられて純血主義者の集う――マルフォイ家のパーティへ向かったのだった。
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( 後書き )

ちょっと雑な感じがしますが……それでも結構、ドレスは何色が綺麗かなとか
イギリス人にとって珍しい髪の毛の色って本当は何色なのかとか調べたんですよ(苦笑)
まあ化粧に関しては自分詳しくないので、描写のしようがなかったです(苦笑)
しかし色とか地味にしても、目立つだろうなあこの二人(笑)