は、シロガネ山へ向かったらしい。 がそこへ向かったのは一ヶ月以上前だそうで、向かってから今まで、誰の所にも連絡は来ていない事が今判明した。 一ヶ月と更に半月前、俺の小屋でとリーフが再会し、リーフがに用事があると言って連れて行ったきり。 リーフはが勝手にシロガネ山へ行ったのだと話したが、がシロガネ山へ行くようリーフが唆したのは、当人に確認を取るまでもない。 しかし何故よりにもよって、シロガネ山へ行かせたのか。この女は何を企んでいるのか。無表情が逆に不気味だった。悪役の俺より遥かに、胸の中の闇は底知れない。 「シロガネ山って、お前……を利用してまで……!」 「仕方ないでしょ? あたし達じゃ、あたしじゃアイツには勝てないもの! けど、あたし達に勝ったちゃんなら、もしかしたら勝てるかもしれないのよ……!」 リーフの科白に言葉を失っていたグリーンが、我に返って直ぐ詰問にかかった。リーフはキッと相手を見据え、俺に対するクールさを捨てたように声を荒げた。 どうやら矢張り何か企みや目的があったようで、グリーンはリーフのその目的に察するものがあったらしい。しかし外野の俺に、それが何なのか判る筈もない。アイツ、と言う単語から少なからず誰か人が関係している事が汲み取れる。 「下手したら死ぬかも知れないんだぞ! それを、お前は自分の目的の為にを利用して、巻き込んで……! 罪悪感とかねぇのかよッ」 シロガネ山がどんな所なのか、俺も話には聞いている。しかし小耳に挟んだ噂程度で、何処までが真実かは知らない。シロガネ山がどんな所なのか聞いて、俺には一生縁のない場所と即行で判断したからだ。 シロガネ山に入れるのは、強いと認められたトレーナーだけで、入る者を厳しく限定し管理しなければならない程、そこに棲息しているポケモン達が強く危険らしい。つまり白星とは縁遠い俺なんかの入れる場所でもなければ、行きたい、行こうと思うような場所ではない。 だが俺と違ってリーグチャンピオンすらも超え、バッジも十六個持つ強いトレーナーであるにとってそこは、行くのに何ら問題のない場所だった。 俺としては、シロガネ山の話を聞き更にがそこに向かったと聞いて、まだ行っていなかった事を意外に思った。場所が場所な為、俺を探す目的地としては該当しない。しかしアイツの旅の目的、性格を考えると、向上心のあるアイツが、腕を磨く為に行っていなかったのが意外だった。 シロガネ山に行った事そのものに関してはそう驚いたくらいで、多分グリーンの反応がなければ、疑問も抱かず納得していただろうと思う。 「罪悪感よりも、あたしは悔しさでいっぱいなのよ、グリーン。自分で連れ戻せるなら、とっくの昔にやってる。それは貴方だって同じでしょう! それでも出来ないから、ちゃんに頼んだんじゃない。ちゃんとちゃんにも事情は話したわ。危険だって事も言った。その上であの子は行ったのよ。それの何が悪いって言うのよ……!」 責めるグリーンの言葉に、リーフは爆発するように叫び訴えた。グリーンは一瞬それに怯み、厳しそうな顔をした。 しかし二人にそう口論されても、俺には何が何だか判らない。どうやら両者は揃って詳しい説明をしてくれるつもりがないようだし、が聞き入れたリーフの事情は、二人の口論から大体のところを汲み取るしかない。 話から察するにシロガネ山には、人かポケモンかはっきり判らないものの何かがいるらしく、二人はそいつを連れ戻したいが、連れ戻せずにいるらしい。そしてそいつを今度こそ連れ戻す為に、に連れ戻してくれとリーフは頼み、はそれを受け入れ――シロガネ山へ、向かった。 「……の意志なのは、間違いないのか?」 突然俺が口を開いて、口論していた二人は驚いたようだった。グリーンは変わらず厳しい目と疑念の篭った目で俺を見返した。 口論で忘れていたが、そう言えばコイツの正体は不明な儘だった、とその目は語っていた。 だが俺としては、なるべく正体を明らかにしたくない。ましてやこの男は――予測が正しければ、トキワジムジムリーダーの筈だ。となると尚更、知られる訳にはいかない。 それに、の話を聞くならリーフだけで十分だと言うか、そもそもリーフにしか用事はない。 「……そうよ。ちゃんの優しさを、あたしは利用したのよ……!」 「それは別に……いいんじゃねぇか? アイツが決めて覚悟して行ったんなら、それはアイツの意志だろうよ」 「そうだけど……!」 「お前にどう言う事情があんのか知らねぇが、事情を話した上でなら、責めたりしねぇよ、俺は」 大人ぶっているんでもなく、本当にそう思った。 は強い。ポケモンバトルもそうだが、心は俺なんかより強いと思う。直ぐ諦めない粘り強さを持っているし、真っ直ぐで純粋だし、真面目だし。ポケモンを連れているとは言え、単身敵地へ乗り込んでくるような奴だ。無謀なのも、今に始まった事じゃない。 事情を話さずにがシロガネ山へ行くよう仕向けたってんなら、俺は怒っていただろう。しかしは全て理解し納得した上で行ったのだと聞くと、途端に焦りがすっと引いた。 「死ぬかも……知れないのよ」 「大丈夫だろ。アイツの傍には、ポケモンがいるんだし」 旅の中で、ずっとずっとアイツを支えてきたポケモンが、いるのなら。アイツがもし無謀に走ろうとしても、危険を察してポケモン達がどうにかしてくれるに違いない。 追いかけたくても、俺にはあそこで通用する強さがない。そして短い間に強くなってる力も、俺の中には眠っていない。 「いっちょ前に、あの子の事信頼してるのね」 「まさか自分の口から、こんな科白が出るとは俺も思ってなかったな」 誰かを信頼するなんて、ボス以来だ。しかも今回はボスと打って変わって、相手は十歳の子供って言うんだから、俺もいよいよ焼きが回ったのかも知れない。 ましてや―― 一度ならず二度も敵対しておきながら。 「アイツの魅力にゃ、負けるしかないな、全く」 この気持ちで、アイツの気持ちに応えられるかは判らないが、そろそろ認めてもいいのかも知れない。 俺はアイツが、好きなのだと。 こんな所へまで来て探し心配してしまう程、好きなのだと。 .Back ( top ) Next ( 後書き ) 短くて済みません。 やっと認めたラムダさんです。 形的に、リーフに後押しをして貰った感じですかね。 レッドさんは本当に罪深いですね(笑) |