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動き出すなら今




 の居場所は判った。リーフの企みも、大体のところは判った。
 あと一つ判らないと言えば――律儀なが、今回に限って一ヶ月半も知り合いの誰にも――頼み事をにしたリーフにさえ、連絡を寄越していない理由だけだった。
 俺に何も言わず行った理由としては、直ぐ帰ってくるつもりだったのか、あるいは俺を心配させたくなかったからか。


「それで貴方は……ちゃんの居場所を知って、これからどうするつもりなのよ」

「どうするつもりかって、言われてもなあ……」


 傍を漂うドガースをちらりと横目で見るも、相変わらずの困り顔だった。俺も変装メイクの下で困り果てる。
 が何処でどうしているのか、何故突然いなくなったのか、その理由をせめて知りたくて、探しに来た。知ってどうするのか、それ以上は全く考えていなかった。


「シロガネ山にいるんだとしたら……俺じゃ、入っていく事も出来ねぇからな」


 子供一人にも勝てないトレーナーが、屈強な野生ポケモンの棲息する場所になど行こうものなら、瞬く間にやられてしまう。
 俺が命を張っての所へ行くのは――何か、違うだろう。はそんな事、望んじゃいない筈だ。俺が誤って命を張らないようにする為に、何も告げずに行った可能性もある。
 俺には関係のない事で、が頼まれ受けた問題なのだから、さっさと解決し終わらせ、何事も会いに行けばいいと――思っていたに違いない。
 チョウジタウンの地下基地には、ドラゴン使いの男と二人で侵入しておきながら、ロケット団幹部四人全員が集まっていたラジオ塔へは、一人で乗り込んでくるような奴だ。
 独りよがりに、自分の中に溜め込み、誰にも頼らず自分一人で解決させようとする、無謀な奴だ。
 偶には年上を――大人を頼れと言ったって、大した理由もなく突っ撥ねる、十歳の子供。まだ子供だからこそ――頼られる事が、嬉しい。自分に出来る事と出来ない事の区別も、まだ上手く出来ない。


「諦めるの?」


 そう尋ねたリーフの表情は、初めて見る――年相応のものだった。
 自分は悪くない、ちゃんと忠告はした、その上では行ったのだと思っても――それが事実でも、リーフとて気が気じゃなかったのだろう。
 一ヵ月半、音沙汰もない。その状況が一番辛く苦しかったのは、他の誰でもないリーフだった。陽が昇り陽が沈み、一日が終わり一時間が経ち一分が過ぎ一秒が刻まれていくごとに、リーフの不安は掻き立てられ、押し潰されそうになっていったに違いない。
 どんなに口が達者で生意気で頭の回転が速そうに見えても――リーフも俺からすれば、まだ子供なのだから。
 ただより数年多く生きている分、己に出来る事と出来ない事の分別が出来るようになっているだけだ。


「俺にはどうしようもねぇ。小屋に戻って、待つしか出来ねぇよ」


 ポケギアが繋がらない以上、心に浮かんだ言葉をその耳に告げてやる事も出来ない。信じて待って、が帰った時――また来たのかといつものように言って、その時だけ笑ってやればいいんだ。
 俺はただ、待てばいい。がもう一度来るのを待ってさえいればいいんだ。そしてが語るのなら、何があったのかその話を、だらけきった態度で相槌を打ちながら聞いてやればいいんだ。
 俺に与えられた――俺に出来る事なんて、そんなものだろう。


ちゃんが今……不安であそこに、いるかも知れないのに?」


 声を絞り出すように、リーフは言う。
 俺はそれを、黙って聞いた。グリーンも、相変わらず厳しい目をしながらリーフを見守っている。


「じゃあどうしろってんだよ。何か言ってやりたくても、ポケギアも繋がらねぇし、俺じゃあの山に入れねぇし」


 が未だ何の連絡も寄越さないのは、ポケギアを使おうにもシロガネ山から外に電波が届かないからだろう。かと言って、下山して近況を報告しにいくのも何か違う。
 負けず嫌いで頑固なアイツの事だから――頼まれた事を遂げるまで――つまりリーフが連れ戻してと頼んだそいつをどうにかするまで、アイツは下りてこないつもりなのだろう。
 死んだんじゃとは――考えない。


「あたしが……貴方をシロガネ山まで、連れて行ってあげるわ」

「……は?」


 唐突な話に、言葉を失い耳を疑う。最初、を利用して何が悪いのかと言っていたリーフが、そんな提案をしてくるとは思いもしなかった。
 そして矢張り、普段のリーフから考えても今の発言は意外なものらしく、グリーンの顔は理解出来ないとばかりに険しくなった。溜息も零れる。


「……大丈夫なのか?」

「あたしを誰だと思ってんの? ワタルなんてラプラス一匹で十分なんだから!」


 そう自慢げに言われても困る。と言うか俺は、そう言う心配をしたんじゃない。
 恐らくリーフは同様、シロガネ山へ入る許可を貰うくらいの実力を持っている。問題は、シロガネ山へ入れるリーフに同伴して貰う形で、俺なんかも入れるのかと言うところだ。
 幾らリーフに同伴して貰うからと言って、入れていいものか。


「まあ小難しい問題はグリーンがどうにかしてくれるでしょ。行くわよ、おじさん」

「あ、おい――」

「リーフ!」


 俺の制止もグリーンの呼び声も聞かず、リーフはセキエイ高原の方へ走っていってしまった。仕方がないので、提案を無言で受け入れた上で、リーフのあとを追う事にした。
 最後に、トキワジムを仰ぎ見て。










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( 後書き )

リーフさんに振り回される。
グリーンさんの諦めっぷりと空気っぷり。
そしてリーフさんは年上にさん付けをしない。
普通にワタルさんに、
「人に破壊光線撃ったって聞いたわよ。頭大丈夫?」とか言いそう(笑)
自分にも他人にも厳しそう。
フシギソウはいつの間にかフェードアウトしたようです(マテコラ)