03*
貴方の魅力を知りたい




 お月見山の奥地でラムダさんと再会して以来、私はちょくちょく通うようになった。
 本当は暇していた事もあって、ラムダさんがカモフラージュでやってるお店の手伝いがてら、此処で寝泊りしたいと願い出たんだけど、必死の形相でそれは駄目だと怒られた。
 最初はむっとしたけれど、どうやらラムダさんも意見を譲る様子はなくて、仕方がないので私が折れた。出来ればいつでも一緒にいたかったものの、会えたのがそもそも幸いだったし、贅沢は言えない。
 そして今日もまた、作ったお昼ご飯を持ってやってきていた。


「ワニノコ、美味しい?」

「ワニっ」


 ワニノコは嬉しそうに小躍りした。そんな姿を見ていると、私の顔も自然と笑顔になる。可愛いなあワニノコ。撫でてあげるとすり寄ってきた。
 ワニノコの一つ一つの動作を見ているだけで、幸せになる。


「お前のワニノコ、まだ進化してないんだな。相当なレベルだろうに」


 お弁当を食べる私とワニノコを見ながら、カウンターの向こうでだるそうに座っているラムダさんが言った。
 ラムダさんはもうお昼は食べたと言って、折角私が作ってきたお弁当を食べてくれなかった。まあそれは、私が予定も決めずに前触れもなくやって来たのがいけないんだけど。毎日来る訳でもなければ、決まった日に来る訳でもないから。
 仕方がないので、ラムダさんに作ったお弁当をワニノコにあげているところだった。


「進化させないのは、私の我儘なんです。私……ワニノコが好きなので」


 進化を止めるのは自然に逆らう事だと――思いながら。それでも私はワニノコに、お願いした。そしてワニノコは、笑顔で私の気持ちを受け入れてくれた。
 一応かわらずの石を持たせてあるから負担はないと思うものの――進化させないのかと訊かれると、やっぱり後ろめたさが起き上がる。
 オーダイルになれば、頼りがいが大きく増すのも知っている。オーダイルが嫌いって言うんじゃないし、かっこいいなあって憧れる事もある。けれどそれ以上に――ワニノコが、好きだった。
 ワニノコも、私の我儘に付き合って、精一杯応えてくれている。だから私は、貫くと決めた。


「でもこの子、進化しなくても十分強いんですよ。のメガニウムだって倒しちゃうんですから!」


 思わず、感情をいつも以上に込める。
 ラムダさんはいつもと変わらぬ眠そうな目で私を見ながら、へーと言った。余り感心した様子は見られない。
 と言うより、感心以前に気になるところが他にあったみたいな反応だった。
 私の話は聞いているけれど、その話の中で私が欲しい所への反応と、ラムダさんの気になったところへが違っていて、それが原因で心此処にあらず、と言うような。


「因みにワタルさんのカイリューも氷の牙で返り討ちです」


 ラムダさんは何も言わなかったけれど、私をワニノコを見る目はおいおい、と呆れを含んでいた。何も言わないのは寧ろ、唖然として、のようだ。
 そんな反応をされると、ふふ、と思わず笑いが零れてしまう。私の自慢のワニノコを、もっともっと自慢したくなる。
 ラムダさんとのバトルでは相性上、ワニノコを出した事はなかった。だからラムダさんは、まだ身を以ってワニノコの強さを思い知っていない。
 久しぶりにラムダさんとバトル、したいなあ。


「進化させたらどうなるんだよ、それは」

「さあ」


 判らないね、とワニノコに話を振る。まだおにぎりを食べていたワニノコは話を聞いておらず、いきなりかけられた言葉に首を傾げた。最高に可愛い。
 衝動的に抱き締めそうになったけど、ワニノコはまだ食事中だったのでやめておいた。
 でも進化してオーダイルにまでなると、相性の問題も取るに足らぬものになるだろうと思う。
 進化すると、攻撃面だけでなくと防御力も当然上がる。メガニウムの花びらの舞を一回耐えて、一回の氷の牙で倒したけど――オーダイルなら、攻撃を喰らう事なく一発で仕留めるのだろう。
 でもワタルさんのカイリュー相手には、技にもよるけど流星群なら耐えて返り討ちにするから、オーダイルにする必要性は私の中にはなかった。
 ワニノコは、可愛くて強い。その魅力で十分だ。


「ラムダさんこそ、どうしてドガースばっかり持ってるんですか? 私のエーフィにフルボッコにされる為ですか?」

「お前な……」


 ドガースしか持っていないイメージがあったものの、今視界の隅にはドガースの姿以外にラッタの姿も映っているから、それは思い込みだった。
 でも――イメージが、既にドガースで成立している。ラムダさんの変装を見破ったのだって、ドガースのガスの臭いが決め手だった。


「いいだろ、ドガース。悪っぽいから捕ったってのもあるいけどよ、愛嬌ある顔してるじゃん」

「判らない訳じゃないですけど……」


 ドガースのこの嫌味ったらしいような、人を見下した目、別に嫌いじゃない。寧ろラムダさんと並ぶと、何故か笑いを誘う。
 ポケモンとしても嫌いじゃない。ただ訊きたいのは、どうしてドガースなのか、ではなくて。


「何で何匹も持ってるんですか?」


 育成次第では弱いポケモンじゃないけど、パーティメンバーをドガースばかりで形成するのは中々危険がある。
 実際私のエーフィ一匹でラムダさんの手持ちを全滅にした通り、エスパー技で攻められると歯も立たないし手も足も出ない。
 何匹も持つのが悪いって事を言いたいんじゃないけど、せめて他に入れるポケモンをラッタじゃなくて、あくタイプを持ったポケモンにすべきだ。まあ拘りがあるなら、私もそこまで意見しない。
 カリンさんの言葉も――あるし。
 ――強いポケモン、弱いポケモン。そんなの、人の勝手。本当に強いトレーナーなら、好きなポケモンで勝てるように頑張るべき。
 どんなポケモンを持つかは、人それぞれ。ただ私は、強さとかバトルにかつのをついつい考えてしまうから、相性を気にしがち、と言うだけで。


「一匹捕ったらついて来たんだよ」

「え」

「何か捕った奴がリーダーだったみたいでな」


 そこら辺を漂っていた一匹のドガースを掴み、手元に引き寄せる。ドガースはそんな事をされても嫌がる事なく、嬉しそうにガスをポッポッと出した。
 あ、可愛い。にこにこしてる。


「じゃあその子は、お父さんとか何ですかね」

「さあな。そこまで判らねぇよ」


 群れの様子を観察していると、どの子が群れのリーダーだとか判ってくるものの、それがリーダーなのか親なのかは流石に判らない。親子は判り易くても、群れが家族なのかとかは判らない。
 どちらにせよ、ラムダさんがドガースをいっぱい持っている理由を聞いて、何だか嬉しいような気持ちになった。和んだって言うのかな。
 ポケモンとか道具とか、欲しいものは奪うって言うのがコンセプトの悪の集団ロケット団の、幹部だった人なのに。悪人って言えるところがなくて、思わず笑ってしまった。ラムダさんは、やっぱり面白い。意外なところが沢山あって、沢山知りたくなる。
 そして私の事も、沢山知って貰いたい。










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( 後書き )

他愛もない会話。これから先もネタ尽きるまでこんな雰囲気の予定。
多少なり起承転結を加えてはいきますけども。
因みにワニノコの話は実際の私がプレイした時の実話です。
vsinお月見山では、今度こそワニノコでメガニウムを倒してやると意気込み、
倒せるまで何度もリセットしたのはいい思い出。
ちゃんと倒しました。バンギラスの砂嵐ありきでしたけど……。
ワタルさんのカイリューとも、雷カイリューには倒れましたけど、
吹雪カイリューは返り討ちにしてやりましたよははん!
流星群?カイリューはワニノコの体力が持たず出せませんでした。