Nの城の、一番上にある部屋。その入り口でゲーチスと会って、よく判らない話を聞いてから私はその部屋へ入った。 奥へ進むと、Nとレシラムが私を待ち構えていた。 「来たね、。でも……どうやらゼクロムは、目覚めていないみたいだね」 Nは酷く失望した様子でそう呟いた。 確かに、Nの言う通りだった。私は結局此処まで辿り着いておきながら、ゼクロムをまだ目覚めさせられていなかった。 ゼクロムは依然、ダークストーンの儘だ。 Nはどうやって、レシラムを目覚めさせたのだろう。様子から想定すると、ゼクロムやレシラムが目覚める時点で認められているらしい。つまりゼクロムが私を認めてくれれば、目覚めてくれると言う事だろうか。 「たとえゼクロムが――」 たとえゼクロムがいなくても。 そう言おうとした私の声は、レシラムの咆哮によって掻き消された。部屋中がその声に打ち震える。 そして――変化が、起きた。 「ダークストーン……!」 鞄から独りでにダークストーンが出てきて、私とNの間で浮かんだ儘停止した。それから直ぐ、今度はダークストーンが、先程のレシラムの叫びに似た震えを部屋に齎した。 ダークストーンは光に包み込まれ――そこから、ゼクロムが姿を現した。 「ゼク、ロム……」 ゼクロムが――現れた、と言う事は。そして私を向かい合い、私を見下ろしていると言う事は。 レシラムの叫び声に誘発されたとも考えられるけれど、明らかにゼクロムのめは、かかってこいと私に訴えかけていた。 モンスタボールを握る手に、自ずと力が篭る。 これが――ゼクロム。 「……判ったわ。貴方を、ゲットしてみせる」 Nのレシラムと渡り合う為には、ゼクロムの力を借りなければならない。そしてゼクロムは、かかってこいと私に訴えている。 相手は、ポケモン。たとえ伝説と言われようと。 かかってこいと、言うのなら。 私はポケモントレーナーとして、ポケモンに対しポケモンを繰り出し戦わせて――ゲットする。 Nは、奥でじっと私とゼクロムを待っていた。ただ黙って、私とゼクロムのポケモンバトルを見つめていた。 そして私は、ゼクロムを無事モンスターボールで捕まえた。 捕まえる事自体は、思っていたより難しくなかった。と言うのも、ゼクロムが全力で来てはいなかったからだ。どうやら、あくまで私の実力を試し見定める為だけだったらしい。 特に抵抗もなく私に捕まってくれたと言う事は、私は合格だった――捕まえるに足る人間と、ゼクロムに認められたと言う事なのだろうか。 「N……これでやっと、対等ね」 レシラムとゼクロム。白いドラゴンと、黒いドラゴン。どちらが強いのかなんて知らない。でもこれで――私とNの立場は、対等になった筈。 少なからず、私がNの考えを違うと否定出来るだけの自信と立場は、得られた。 そしてこの状況は――他の誰でもない、Nが望んで出来た、現実。Nは、この時を待っていた。私が彼を追い辿り着き、自分を止めにくるこの状況を。 「……そうだね。準備は整った」 Nの心は揺れている。 この城を出るまで彼の小さな世界では、ポケモンが人に恨みを持っているのは当然だった。ポケモンと人は共存出来ないものだった。 けれど――彼はこの城から外の世界へ、出た。 野生のポケモンや、ポケモントレーナーと共に生きるポケモンを――この世界の今の自然を、彼はその双眸で目の当たりにした。 その時の彼がどんな気持ちだったのか、私には判らない。自分の世界が崩れ落ちた時、Nは混乱したのだろうか。 ――今も、混乱しているのかも知れない。 どちらが、真実なのか判らず。 「僕が正しいか、君が正しいか……どちらが理想か、真実か」 私にとっての理想は、今まで通りの――ポケモンと共に生きられる世界。 Nにとっての理想は、今までと違う――ポケモンだけの、世界。 人とポケモンの本当の触れ合いを見てきたNなら、どちらがいいのかきっと判っているのだろう。どちらをポケモン達が望み喜ぶか、判っているに違いない。 でも――全てがそうでないのが、現実だから。 多数決で、世界は語れない。 「今此処で、はっきり決めようじゃないか」 白か――黒か。灰色はなく、明確に。境界を、はっきりと。 Nか、私か。 勝った方が、真実。それが判りやすくていい。力ずくでも彼を止める為に――私は此処まで、来たのだから。 .Back ( top ) Next ( 後書き ) バトルシーンは金銀HGSSで理屈詰めに書き込んだ(?)ので、かなりさくさくです。 まあ今更な話ですが、BW主の手持ちは明確に決めてませんしね。 白黒つけるぜ! って言うとゼブラ的なマンが出てきてギャグになるので、 その科白を余り連想させないよう頑張りました。多分。 マイナーバージョンはどうなるんでしょうねぇ。 |