12*
解放されたのは




 Nとのバトル――。
 互いに最初の一匹目は、それぞれレシラムとゼクロムだった。しかし結局二匹のドラゴンに決着は着かず、同時に伏し引き分けとなった。
 しかし私とNの手持ちは当然、レシラムとゼクロムだけではなかった。それぞれ、残り五匹。まだバトルは始まったばかりだった。


「ゆけ、アバゴーラ!」

「ツタージャ、貴方に任せるわ!」


 そしてバトルは進み、Nの手持ちは今繰り出されたアバゴーラを含め、二匹となった。
 アバゴーラは水と岩タイプを持つポケモン。ツタージャとの能力差はあれど、草との相性は相手にとって最悪。


「ツタージャ、ギガドレイン!」

「アバゴーラ、ストーンエッジ!」


 ツタージャは素早さが高い。当然、アバゴーラより早くツタージャの攻撃が決まる。
 アバゴーラは防御が高いので、此処は物理のリーフブレードよりも特殊攻撃であるギガドレインの方がより攻撃を与えられる。
 しかし。


「がんじょう……!」

「ツタ……っ」


 アバゴーラの特性がんじょうで、アバゴーラはツタージャの攻撃を耐えた。HP満タン状態から一撃で倒される時、HPを1残して耐えると言う特性。
 しかし幸い、アバゴーラのストーンエッジは外れ、ツタージャには当たらなかった。
 次の攻撃でアバゴーラを倒すに至る。しかしもし此処で攻撃が当たっていれば、私の焦りを生む結果となっていただろう。
 Nの残りの手持ちは一匹。
 私は出来ればこの儘――。


「え――ツタージャ?」


 突然、ツタージャの体が光り始めた。これは――進化の兆候。
 今までツタージャは、何故か判らないけれど進化を拒んできた。私も特に進化を促すような事はせず、進化の意志はツタージャに委ねていた。
 でもまさかこんなところで進化するなんて。
 こんな――タイミングで。


「ジャノ!」

「ジャノビー……それが、貴方の意志なのね」


 今まで何故頑なに進化を拒んできたのかその理由は判らないものの、今その意志を変えて進化する程ツタージャ――ジャノビーはこの戦いに全てを賭けている。
 この戦いで、負けは絶対にあってはならないのだと。
 そして、ツタージャの儘では勝てないと思った。


「いいかい? 

「ええ……いいわ」

「僕の最後のトモダチは――この子だ!」


 そう言ってNが繰り出したのは、アーケオスだった。相性が――悪い。
 いやそれよりも、アーケオスはさっき倒した筈だ。もう一匹持っていたと言うならそれまでだけど、アーケオスは古代の鳥ポケモン。そう多く捕まえられるポケモンではないし――そもそも、Nが同じポケモンを二匹繰り出してきた事は今までなかった。
 ――違和感がある。


「ジャノビー、ギガドレイン!」


 アーケオスは攻撃力が高いけれど、一撃くらいジャノビーが耐えてギガドレインで半分以上のHPを削れれば、勝機はある。
 アーケオスの特性は弱気。HPが半分以下になると能力値が下がってしまうと言う特性だ。
 だから相性が悪かろうと、まだ負けとは決まっていない。


「火炎放射だ」

「な――」


 アーケオスは、火炎放射を覚えない。しかしNのアーケオスはNの命令通り、火炎放射を繰り出してきた。
 ――効果は抜群だ。
 けれど、何とかジャノビーは耐えてギガドレインで切り返した。
 そして攻撃を受けたアーケオスに、異変が起きる。


「あれは……ゾロアーク……!」


 幻影ポケモン、ゾロアーク。特性はイリュージョン。
 手持ちポケモンの最後のポケモンに姿を変え、攻撃を受けた時にその姿――ゾロアークの姿に戻る。
 イリュージョンはあくまで幻影。メタモンの変身と違ってタイプや技、能力までは変わらない。
 つまりジャノビーが受けた火炎放射は、特攻の能力値の高いゾロアークの技として繰り出されたものだったと言う事になる。
 ――そうなると。


「ジャノ……!」


 ジャノビーのHPの消耗は思った以上と言う事になる。寧ろ一撃で倒れてもおかしくなかった。恐らくジャノビーは今、殆ど気力だけで立っているのだろう。
 此処は素直に、交代させるべきか。
 モンスターボールを握る手に力が篭り、私は悩んだ。汗が頬を伝う。
 相手はゾロアーク。素早さと特攻が種族的に高い。ジャローダなら素早さで勝てていたかも知れないけれど、ジャノビーの能力値がゾロアークを上回るのは難しい。
 つまり此処でジャノビーに次の技を命令しても、それを繰り出すより早くゾロアークに先手を取られ、やられてしまう。
 この状況下、Nがゾロアークに攻撃以外を命令するとも思えない。
 いや――それでもジャノビーのHPが限界に近いのは、逆に勝機だった。


「ジャノビー……いつも無茶させるわね」

「ジャノ!」

「ええ……お願い」


 プライドの高いジャノビーの事だ。折角進化したのだし――此処でモンスターボールへ戻してしまうと、一生私を許してくれなくなるに違いない。
 元よりジャノビーにも、戻るつもりはないのだろう。
 勝つか、負けるか。
 今此処には、その二つしかなかった。


「ジャノビー、リーフストーム!」


 この技で――決まるのなら。技を繰り出したあとに特攻が下がろうと、関係ない。この攻撃を繰り出せるか出せないか、それが決め手だったのだから。
 そして――ジャノビーはゾロアークより早く、攻撃を繰り出した。
 全身全霊の力を込めた攻撃がゾロアークに直撃し、ゾロアークはその儘倒れてしまった。


「何でジャノビーの方が……」

「カムラの実よ。ピンチの時に食べると、素早さが上がるの」

「……なるほどね」


 ポケモンバトルは攻撃力や防御力が大事だけど、それよりも遥かに素早さが物を言う、割とシビアな世界だ。
 どちらが早く動けるか、それが勝負の決め手になる。
 例えば先に攻撃出来るのは勿論だし、先に補助技で能力値を上げ防御とかを上げられると、倒しにくくなってしまう。
 だから――もし、攻撃に耐えられた時、反撃の勝機を少しでも見出す為に。
 私はジャノビーに、カムラの実を持たせていたのだ。


「流石、此処まで僕を追いかけてきただけの事はあるね」


 Nは倒れたゾロアークをモンスターボールへ戻すと、辛そうに顔を歪めてそのモンスターボールを見つめた。
 結局Nは此処まで来て――私に、負けてしまった。私に、一度も勝つ事がなく。


、君の――いや、君達の勝ちだ。君達の理想が真実だ」


 そう言って笑ったNの表情を、私は忘れない。儚いながらも――本当はそれが正しいのだと随分前から判っていたと言うような、ほっとした表情を。
 そして私はその時、悟った。
 このバトルの結果で解放されたのは、ポケモンではなく――Nなのだと。










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( 後書き )

凄く駆け足で、しかもご都合主義にも程がありますが……。
道具で助けられると言うか、道具って本当バトルを凄く左右しますよね。
しかしBWでカムラの実は入手困難と言うか、多分入手不可ですね。
ドリームうんちゃらは知りません。