14*
背中を押してくれるもの




 ゲーチスは、相当手強かった。圧倒的だったと言ってもいい。
 でも、そんな圧倒的な強さを見せつけられようと、私は負ける訳にいかなかった。諸悪の根源であるゲーチスを此処で倒さなければ、今度こそ、此処までやってきた、戦ってきた事が水の泡になってしまう。
 チェレンやベル、アデクさん、N、そしてジャローダや他のポケモン達。皆の想いをこれ以上、踏み躙られない為にも。
 今此処にある現実と夢を、理想と真実を守る為にも。


「相手はもう、あのサザンドラ一匹……」


 ゲーチスの手持ちポケモンを残り一匹、サザンドラのみにまで追い詰めた。
 しかし――このサザンドラが、果てしなく強かった。
 それ程早くないが、その分硬いように感じる。ドラゴンタイプ相手では、草や炎、電気に水などメジャーなタイプの技の効果が今一つだからだろう。
 生半可な攻撃では耐えられて、私の方が返り討ちにされる。特防の高いポケモンがいない為、サザンドラの高い特攻で繰り出される技に、私のポケモン達は耐え切れなかった。
 でも――ポケモン達はそうして倒れながらも、バトンを繋いでくれた。
 一か八か――。
 いや、もうこの子しか残っていない。


「ジャローダ、行くわよ!」

「ジャロ!」


 はっきり言ってジャローダに、サザンドラと戦って勝てる要素はほぼなかった。
 タイプの相性も悪く、相手とのレベル差もある。草タイプの技はドラゴンタイプに効果は今一つ。それでもいつもなら耐え抜く余裕さえあれば、勝機を見出せた。
 しかし――悪い事に相手のサザンドラは、火炎放射を覚えていた。高い特攻の能力値を持つサザンドラの火炎放射。それを一度でも耐える力を、生憎ジャローダは持ち合わせていなかった。
 ――でも。


「全てがこの一撃で決まるわ」

「……ジャロ」


 でも、私のポケモン達は此処まで道を、バトンを繋いでくれた。ジャローダがサザンドラに勝つ為の道を、築いてきてくれた。
 私は深く息を吸って、静かに吐いた。ジャローダも目を閉じて、心を落ち着ける。
 ゲーチスはそんな私達をじっと見つめていた。自分の勝利を確信したかのような、笑みを浮かべて。


「ポケモンバトルは運も大事! 最後まで何が起こるか判らないのよ」

「何を言いたいのです?」


 勝負をまだ捨てない私を、ゲーチスは訝る。
 確かに、ゲーチスのサザンドラは強い。圧倒的だ。
 ――でもポケモンバトルは、ただ力だけじゃ勝ち進めない。力押しで勝ち抜ける程、甘くない。まあ結局私も、力押しなんだけど。


「勝ったって思うには、まだ早いって事よ!」

「何を――」

「ジャローダ、ギガインパクト!」


 たとえ圧倒的な特攻を持とうと、耐えられる力あるいは相手より速いスピードがなければ意味がない。
 特に――ポケモンバトルにおいて素早さの高さは、バトルを大きく左右する。
 ジャローダのギガインパクトが、相手のサザンドラに決まる。ジャローダは攻撃の反動で次の行動が出来ないけれど、勝負はその一撃で決まった。
 たとえサザンドラの体力を削っていようと、自分のタイプと一致したリーフブレードで攻撃しようと、サザンドラを倒すには至らなかっただろう。ドラゴンタイプと草タイプの相性の悪さ、その壁は大きい。
 ジャローダで――ツタージャでドラゴンポケモンを相手するのは、一度味わった悔しさから学んでいた。
 だから、草タイプの技が通用しない相手でも対抗出来るようにと、切り札として覚えさせておいたのだ。


「馬鹿な、こんなただのトレーナーにこの私が負けるなんて……!」

「じゃあ言わせて貰うけど――貴方の何処が、特別だって言うの?」


 私の言葉にゲーチスは言葉を失った。
 指摘されて初めて知った――と言うのではなく、何を言っているんだこの娘は、と言うような目をしていた。
 私は構わず、言葉を続ける。


「今まで沢山のポケモンを利用して傷つけてきた……そんな貴方に、私が負ける訳ないじゃない」


 この旅を通じて、沢山のものを背負ってきた私に。自分の望みしか考えてこなかった相手に負ける訳がなく、負けてもいけなかった。
 それは私にとって重くのしかかるプレッシャーにもなったけど、それ以上に私の背中を押してくれるものになった。私は皆の言葉を受けて、此処にいるのだと。
 アララギ博士からダークストーンを受け取った時の事を、思い出す。


「この世界は私やN、ツタージャやレシラム、ゼクロム、ポケモン達……皆のものよ。貴方だけのものじゃない」


 Nのように、自分の想いだけでなく他の皆の想いがあれば、私はまた迷っていただろう。
 Nと戦い、彼の考えに向かい合える自信がなかったのは、彼は自分ではないポケモン達の想いを背負っていたからだ。
 ――けれどゲーチスには、それがなかった。
 何が目的か明確には知らないけれど、自分の息子だからと言ってNの人生を縛るような人が、ポケモンの事を想い解放しようとしている――とは、到底思えなかった。
 結局ゲーチスは私の言葉にただ歯軋りして悔しがるだけで何も言わず、手持ちのポケモンを倒され抵抗力を失くし、あとからやってきたチェレンとアデクさんに連れて行かれた。
 ――Nは連れられていく自分の父親の姿を、黙って見送っていた。










.Back   ( top )   Next

( 後書き )

再三言ってる気がしますが、ジャローダでサザンドラはきついです。
火炎放射一撃で倒された経験者が書いてるので、
ちょっとしたご都合主義なところは目を瞑って頂けると幸い。
基本ジャローダの覚える技って草しかないですよね。
私は草以外に救済として体当たり覚えさせっぱなしでした。
一旦クリアしてから体当たりを怪力に変更しました。
取り敢えずサザンドラに苦戦する姿を少しでも書きたかったので、苦労しました。
初見だとどうすればいいの!?って思う相手ですが、
判ってれば対策打てる相手ですよね。
けどまさかドラゴン相手に格闘で攻めるなんて発想ないよ。
モノズ捕まえてても、タイプまで覚えてる可能性って低いと思います!
私はサザンドラ見てモノズって言う発想すら怪しかったです!
ドラゴン判っても悪タイプは出てこないと思います!