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聞こえるなら




 プラズマ団は、ポケモンを解放しろと言いながら、その実は悪い人達の集まりだと私は思っていた。いや、思っていたと言っても、それは今も変わらない認識だ。
 最初は――カラクサタウンで聞いた演説に、どきりとしたものだった。けれど旅をしてその途中で幾度となくプラズマ団と関わっていく内に、私の目にはその実体が見えつつあった。
 ポケモンの解放を謳いながら、彼らが行う事と言えば、ポケモン達の意志を無視した酷い解放だった。
 ポケモン達がポケモントレーナーと一緒にいるのは、彼らポケモンの意志あってこそである。彼らは捕まってしまったからと言う事を理由に、私達の傍にいるのではない。彼らが私達の傍にいるのは十分、彼らの気持ちの表れだった。
 一緒にいくと決めたから、一緒にいてくれる。
 その気持ちをポケモン達が持っている事を、ツタージャから教えて貰った。
 相変わらず声は聞こえない。でも、私の言葉に対してポケモン達は明確な返答をくれる事が判った。ポケモン達が私へ何かを訴えようとする時は、まだよくその気持ちを汲み取れないけれど、私の言葉はポケモン達に届いている。
 だからポケモン達を私達ポケモントレーナーから解放すると言うのは、おかしいのだ。
 確かに、世の中全てのトレーナーがポケモンを可愛がって大切にしている訳じゃなくて――中には酷い扱いをしている人も、いるのだと思う。その人達からポケモンを助ける事は、必要だろう。
 ――でもプラズマ団は寧ろ、そう言う悪い人達なのだ。
 私は見た。夢の跡地で、ムンナを虐げるプラズマ団を。幼い子供から、大切なポケモンを奪うプラズマ団を。そして――ベルのムンナを奪った、プラズマ団を。
 何処が解放なのか。人とポケモンを引き離す事が――本当に解放になると、思っているのか。
 そんな現実の歪みを目の当たりにしながら、私は旅を続け――ライモンシティへ到着していた。ライモンシティへ到着するなり、またプラズマ団が騒ぎを起こしていた。今度はおじいさんからポケモンを奪おうとしていた。
 私はすかさず助けに入って、プラズマ団を撃退した。いつもならそれでプラズマ団は何処かへ逃げて私は見失ってしまうのだけれど、今日は違った。
 プラズマ団は私にポケモンバトルで負けると、遊園地に逃げていった。
 出入り口の限られているような場所へ、何故逃げたのか。いつもなら深追いはしないけれど、今日はそれが気になって、気付けば遊園地へ追いかけていっていた。
 しかし遊園地に入ると、プラズマ団は見当たらなかった。
 誰か見ていないだろうかと、聞き込みをしようとした――時、だった。


「ねえ君、プラズマ団を探してるの?」

「え? ――あ」


 声をかけられて振り向くと。
 そこには、Nがいた。Nと会うのは、これで三回目だった。
 不思議な雰囲気を持つ少年。彼が一体どんな人物なのか、それは未だによく判らない。レシラムとトモダチになるのだと言っていたけれど、レシラムとは何なのかすら、私には判らなかった。


「プラズマ団ならあっちに行ったよ。一緒に探そう」

「あ……ありがとう、ございます」


 今まで二回、よく判らない儘唐突にポケモンバトルを挑まれた為、この流れには少し驚いた。
 けれど、他の人を危険な目に遭わせる訳にはいかないので、一人で探しますと――断ろうとするより早く、彼は私の手を引いて歩き出してしまった。私は驚きの余り何も出来ず、気付けば観覧車の前にいた。観覧車の入り口には、二人乗り専用と書かれていた。


「……いないみたいだね。観覧車から探そう」

「えっ、でも――」

「僕は観覧車が大好きなんだ。あの円運動……力学……美しい数式の集まり……」

 断る暇もなく、私は彼に観覧車へ乗せられた。小さな空間で二人きり。景色を眺める余裕は生憎となかった。
 どうすればいいのか判らず彼の様子をちらりと見ると、彼はじっと私を見ていた。


「僕がプラズマ団の王様」


 開口一番のその言葉に、私は言葉を失った。
 プラズマ団の王様とは――どう言う事なのか。あの、プラズマ団の王様――つまり、リーダーだと言う事? ポケモン達を奪ったり傷つけたりする、酷い人達の。
 ポケモンの声が聞こえる彼が――何故。
 驚き目を見開いて彼を見る。彼は、笑いながら話を続けた。


「まあ、頼まれてなってるんだけどね。それに、僕にはポケモン達を解放する義務があるから」

「それなら、何で……!」


 それなら何で――ポケモンにあんな酷い事をする人達と、一緒にいるの?
 ポケモンを解放するって言うのは、自由にするって言う事だった筈じゃないの? 人間がポケモンを酷使するから――と、彼は考えている筈。
 そんな彼が、ポケモンを痛めつける事を許すとは思えない。
 まだ――彼がどんな人なのか、判らないけれど。私なりに感じた彼と言う人柄は、あんな酷いところを見た時、私と同じ気持ちになると思う。


「貴方にはこの子達の、ポケモンの声が聞こえるんでしょう? 聞こえるなら――」

「聞こえるからだよ」


 私の訴えを遮るように、彼は言った。私は益々、判らなくなった。プラズマ団とは何なのか。彼は
――何を、考えているのか。
 あの時、夢の跡地で見たプラズマ団は下っ端だった。と言う事は――彼の目が届いていない、のかも知れない。彼は――知らない、のかも知れない。
 自分の仲間が、ポケモンを傷つけている事を。
 でも私はそれを、言うべきだろうか。今、この場で。
 言っても――彼に、私の声は届くのか。


「僕には彼らの声が、悲鳴が聞こえる。ポケモン達は、助けてって言ってるんだよ」


 それは違うと、私には否定出来なかった。本当に彼がポケモンの声を聞けるのだとしても、本当は聞けないのだとしても、私がそれを否定出来ない事実に変わりはなかった。
 ツタージャの考えは、声が聞こえなくても大分判るようになったと思う。
 でも――なまじ過去に、薄ぼんやりと消えかかっていようと、ポケモン達の声が聞こえた事のある私は、聞こえない今、私の理解が正しいのだと言う自信が持てなかった。
 観覧車は、そこで一周となって終わった。
 先に降りてから振り返ると、Nが観覧車を背に立って、直ぐそこにいた。少し離れた位置にいるだろうと思って振り返った為、私はその近さに驚いた。


「僕はチャンピオンを超える。僕を止めたかったら、追いかけてこなきゃ駄目だよ」


 不敵に笑って、Nは去っていった。私は暫く呆然とそこに立っていた。状況が上手く、呑み込めず。自分の考えも上手く、纏まらず。
 そう言えば結局、プラズマ団も見つからなかった。もしかするとNはプラズマ団を探そうとしたのではなく、仲間である彼らを逃がす時間稼ぎの為に、私を観覧車へ誘ったのかも知れない。
 私は――Nを、止めるべきなのか。私に止める権利が、あるのか。
 Nの考えは間違っていると、否定出来ない私に。










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( 後書き )

Nとのバトルが自然消滅(苦笑)
イベントの科白はうろ覚えです。
まあバトルが自然消滅してる時点で、ゲーム通りって言う訳ではもうないんですが。
あと、雰囲気的にツタージャは進化しそうにない(笑)
でも最終決戦で進化! って言う展開はいいですよね。
どっかにあった気がする。イエローか。