私は――どうすればいいか、判らなかった。Nを追いかけるべきか、追いかけていって止めればいいのか。私にそんな権利があるのか。 ただ、立ち止まる訳にはいかなかった。ツタージャが私の手を引いて、行こうと言ってくれる限り。 とは言えこの旅には、私の意志がない訳では勿論ない。ツタージャが手を引いてくれると言うのも確かにあるけれど、私はこの旅を通して、もっとポケモンを知りたい。その想いで続けている。 ポケモンを知れば――いつかまた、声が聞こえるだろうと信じて。 そして旅を続けていくと、電気石の洞窟でまたNと会った。 Nは、ゲーチスが君の力を見てみたいんだって、と言う言葉を一方的に残して先に行ってしまった。相変わらず、彼の早口には圧倒されてしまう。 それから洞窟を進むと、Nが言っていた通りと言うか、プラズマ団が私を待ち受けていた。不必要なポケモンバトルはしたくなかったけれど、挑まれた以上逃げる訳にはいかなかった。 それに此処でプラズマ団から逃げたら、この洞窟にいるポケモン達に危害が及ぶ――プラズマ団がポケモン達を傷けるかも知れなかった。 たとえ此処にNがいるのだとしても、彼の得体と本音が全て見えた訳ではないのだから。 プラズマ団の下っ端のポケモンに対する酷い行為を本当に彼は知らないのか、私は確かめられずにいる。もし知らないのだとしたら、彼は傷つく――だろうから。 「此処まで来たんだね」 洞窟の奥まで進んで、外の光が見える場所にNはいた。私がプラズマ団の下っ端を負かし勝ち進んでくるのを待っていたらしい。 そしてNは、私にポケモンバトルを挑んできた。 プラズマ団の一人――いや、王様として。つまり私の敵として――Nは私を敵と見做して。 いや――けれどNは私に、僕を止めたかったら追いかけてこなきゃ駄目だと言った。 あの時は唐突な事ばかりで思考がついていかず、気付いた頃にはもうNの姿がなくなっていて、残された言葉を上手く呑み込めずに――此処まで来た。 でも今漸く、彼の真意が一瞬だけ見えた気がした。 私にとって彼は、今のところ敵じゃないと、思う。ただいつも、Nが私にポケモンバトルを挑んでくるから、気付いたら戦っていると言うだけで、顔を合わせたらいがみ合うような関係ではない。 寧ろ私は彼を憎めずにいる。敵と思えずにいる。プラズマ団は悪い人達と、思っているのに。 私は彼を悪い人じゃないと思っているけれど――彼は私を、どう思っているのだろう。道を阻もうとする、敵だろうか。いや――多分そう言う認識は、されていない。今こうして戦っているのだって、私がくるのを彼が待っていたからだ。道を阻んでいるのは寧ろ、彼だ。 でも、私がプラズマ団の目的を阻もうとするのを阻んでいる――訳でもない。それとは違う。 あのゲーチスが、私の力を試したいと言う話もよく判らないけれど、私の印象としてはゲーチスよりもNの方が私を試したいのだと思った。 Nは私に――追いついて、欲しいのではないかと思った。 私が彼に追いつくような、止められるような技量があるのか確かめたくて、今私と戦っているのだと思う。 でなきゃ――あんな科白は、出てこない。止めたいなら、なんて。 そんな言い方じゃ――まるで。 「……僕の負けだ」 ポケモンバトルの勝敗は意外と早く着いた。 Nはいつも、違うポケモンで私に挑んでくる。私にすれば、ポケモンバトルを任せられるのは此処まで一緒に旅をしてきたポケモン達じゃないとと思うけれど、Nにしてみればポケモンは皆等しく、大切なトモダチなのかも知れない。 だからその時その時、力を貸してくれる子達と共にバトルをしているのかも知れない。 でもNは――ポケモンバトルをしたくて、しているのだろうか。 こうして彼から私へバトルを挑んでくるけれど、必ずしもバトルが好きだから挑んできているとは限らない。 寧ろ――そうだ。私はいつも、ポケモンバトルに集中しているから中々気付かないけれど、ポケモンバトルをしている時のNは、いつも辛そうに顔を歪めている。だからやっぱり、ポケモンバトルは嫌いなのだろう。 大切なトモダチを自分の目的の為に戦わせているのだから。 自分達人間がいなければ、不必要な戦いをしなくていいだろう――ポケモン達が。 だとしたらやっぱり、彼は辛くて辛くて――そんな辛い想いをしてでも助けたいから、戦っている。ポケモンの声が聞こえる彼なら、尚更辛いだろうに――彼は。 「、君にも夢はあるのか?」 「え? ……うん、あるよ」 唐突な話に、一瞬気が回らなかった。少し間を置いて頷くと、彼はそうかと頷いた。 彼にも――夢はあるのだろうか。あるのだろう。君にもと、彼は言ったのだから。ポケモンを自由にして――解放すると言う事が彼の夢なのだろうか。 そして私はもしかすると、その夢を阻もうとしているのかも知れない。 「私も、貴方のようにポケモンの声が聞こえるようになりたいの」 旅を始めた理由。旅を続ける理由。この旅の目的。幼い頃の記憶が風化してしまわない内に早く、叶えたい夢。 言い換えると私は、彼になりたいのかも知れない。ポケモンの声が聞こえて、ポケモンと対等でいられる彼に。 「そう……君なら、もしかしたら聞こえるようになるかも知れないね」 昔は貴方のように聞こえていたのよと言うと、彼は失望するのだろうかと思った。思って、結局言わなかった。言えなかった。失望されたくなくて。 昔は聞こえて、じゃあ何故今は聞こえないのか。そう訊かれたら、応えられない。 それは私が知りたい事だから。 「じゃあ待ってるよ、」 そう言い置くと彼は洞窟から出て行った。 呆然と立っていると、ベルとアララギ博士がやってきて、どうしたのと訊いてきた。私はNとのやり取りを少しだけ二人に話した。でも、私が彼に思った事は何も話さなかった。 待ってるよなんて――まるで自分を止めて欲しいみたいだと、思った事も。 .Back ( top ) Next ( 後書き) 走り走りですが、まあご愛嬌。 展開とかうろ覚えの中書いて、一応科白だけは確認しつつ。 まあゲームの科白じゃないですけどね。同じニュアンスを保ちつつ変えてます。 |