リュウラセン塔に、プラズマ団が入っていった。 ハチクさんによるとリュウラセン塔の頂上には、伝説のポケモンに纏わる何かがあるらしい。何があるのかは、知られていない。今まで誰も――入った事が、なかったから。 しかし今、プラズマ団が頂上にある何かを求めて、塔の一部を爆発させて中に入っていった。 私とチェレンはプラズマ団を止める為、プラズマ団を追って塔の中へ入った。 塔を上っている時、大きな揺れと聞いた事のない――ポケモンと思われる声が、聞こえた。厭な予感がしてならなかった。 そうして逸る気持ちで辿り着いた――頂上には。 「やあ、」 思った通りそこにはNがいた。 Nと――見た事のない、大きな白いポケモンがいた。先程の声は、あのポケモンの声だったのか。 「N……その、ポケモンは……?」 「レシラムだよ。僕とトモダチになってくれたんだ」 Nがレシラムに手を伸ばすと、レシラムは差し伸べられた手に顔をすり寄せた。 レシラムと言うと――以前Nがトモダチにならなければと言っていたポケモンの名前だ。 あれが――レシラム。この塔に現れたと言う事は、もしかして伝説のポケモン、なのだろうか。伝説のポケモンなのだとしたら。 Nはレシラムとトモダチになって――何を考えているのだろう。何を、するつもりなのか。ポケモンを解放する為に。 「これから僕はレシラムと共にポケモンリーグに向かい、チャンピオンを超える! ポケモンを傷つけてしまうポケモン勝負はそれで最後。ポケモンだけの世界……漸く実現する……」 Nはポケモンバトルが嫌いだと言っていた。私はそれを聞いて、そうだろうなと思った。 ポケモンの声が聞こえない私でも十分、傷つくポケモン達を見て辛い気持ちになると言うのに――彼らの声が聞こえるNには、バトル中の悲痛な声も届いているのだろう。 Nがポケモンバトルを挑んでくる時に連れていたポケモンは、全て捕まえたり無理強いして連れてきたのではなく、ポケモン達がNの力になりたくて、力を貸しているのだと思う。それなら尚更Nは――辛い思いを、しているに違いない。 でも戦って此処までこなければいけなかったから、彼はそれでも戦ってきて、これから最後の戦いに向かおうと言うのだろう。 これも偏に、ポケモンの為――ポケモンを、解放する為に。 「ポケモンだけの世界……」 私達人間のいない世界。それは果たして、本当にポケモン達の喜ぶ世界なのだろうか。 共に旅をしたり日々を暮らしてきたパートナーが、互いにいなくなった世界。ポケモン達はそんな世界を本当に、望んでいるのか。 彼らの声が聞こえない私には、何が真実か判らなかった。自信が持てなかった。 だって――ポケモンの声が聞こえるNが、ポケモンの為を思ってやろうとしている事だから。 「。君は僕を止めたいって、思ってる?」 何で、そんな事を訊くのか。そうやって訊いてくるのはやっぱり、Nの根底にも迷いがあるからだろうか。本当に正しいのかと言う、迷いが。 正しいとは思うのだけれど、完璧な自信が持てない。だからもし――自分を止める存在があるのなら戦って、力を試す。戦えば、全てが明らかになるから。 勝った者が正義で、世界を制する者だと――判るから。 私は、Nの問いに応えられなかった。 今此処にいるのは確かに、何かあるなら止めなければと言う思いがあったからだ。けれどそれは明確に、Nを止めなければならないと言う決心ではなかった。プラズマ団が何かをしているなら――止めなければと、思っての行動だった。 観覧車に乗った時、僕がプラズマ団の王だとNは私に告げた。だからNもプラズマ団なのだけれど――依然、私は彼とプラズマ団を一緒にして見れなかった。 今こうして向かい合っても尚彼は彼で、プラズマ団ではなく――寧ろプラズマ団として、浮いている気さえする。 だから彼を止めなければとは、思えない。 私だけの――考えでは。 「タージャ!」 「……ツタージャ?」 足元にいたツタージャが、小さな片手で私の足を掴みながら一歩私の前に出て、Nに対し何かを言った。そして直ぐ、私の足にしがみついた。 一体――どう言う意味なのだろう。ツタージャはNに、何と言ったのだろう。 Nはツタージャをじっと見つめ、その目は少し見開かれていた。 「……君のツタージャは、僕を止めると言っているよ。君と、離れたくないからって」 Nの言葉には私も驚いた。直ぐにツタージャを見下ろせば、足にしがみついた儘私をじっと見上げていた。強い瞳に、強い意志を持って。ただ、何も言わず。 ――それで私には、十分だった。 「そうね……私は貴方を、止めるわ」 もしかしたら初めて――はっきりとした意志を持ったかも知れなかった。 今まで私は、彼の気持ちや考えを止める自信がなかった。彼は間違っていると、はっきり否定出来なかった。 でも――ツタージャには彼の気持ちを自信を持って、否定出来た。ツタージャは彼が解放を想う、ポケモンだから。 ツタージャが私と離れたくないと望んで、くれるなら。 私はパートナーの為に、それを叶える義務がある。 「そう。なら君も英雄になればいい。レシラムと対を成すゼクロムに認められたら対等になれるよ。僕には見える。君がゼクロムに会う未来が。ポケモンとの絆を護りたいなら、ゼクロムを探しておいで」 きっとゼクロムは、ダークストーンの状態で君を待っているよ。 Nはそう告げると、レシラムに乗ってあっと言う間に何処かへ――否、ポケモンリーグへ向かっていってしまった。 今の私には、彼を追う術がなかった。追いかけても――彼の言う通りまだ対等でない私には、止められないだろう。 私が彼と同じ英雄になれるのか判らないけれど、判らなくても――彼と対等に、同じ位置に立たなければならない。でなければ、彼を止められない。 折角の初めての決意が――壊れてしまう。 ツタージャと離れ離れになるのは――絶対に、厭だから。 私は彼を、止めなければ。 .Back ( top ) Next ( 後書き ) やっと前進、と言うところですね。 ジャローダにしてもいいんですが、ツタージャの弱いけど立ち向かう、 みたいな演出が出来なくなるので、現状ツタ子で。 因みにレシラムなのは、今更ですが私がホワイトからやったからです(両方やったけど) あともふもふ具合からも、ゼクロムよりレシラムの方が Nに会うんじゃないかと思ってます。個人的に。 |