Nの言うダークストーンは、一体何処にあるのか。 私はNを止める為、チェレンやアデクさん、アララギ博士に手伝って貰って、ゼクロムの眠るダークストーンを探した。 ありそうだと一番に思ったリゾートデザートの地下の遺跡――古代の城には残念ながら何もなく、ゲーチスが待ち構えていただけだった。 リュウラセン塔でもなく古代の城でもないとなると、何処にあるのか。イッシュ地方を巡り歩いていたと言うアデクさんに他に心当たりがあるのを頼るしかないと思い、一旦リゾートデザートの外へ、出た時だった。 「はい、もしもし」 「? ちゃんと繋がってる?」 「はい、聞こえてますよ。どうしたんですか?」 突然ライブキャスターが鳴り出したので驚いて出てみれば、電話をかけてきたのはアララギ博士だった。とても慌てた様子だった。 もしかして――と、私の気持ちも逸る。 「兎に角、シッポウ博物館へ今直ぐ来て! じゃあ、待ってるからっ」 「あ――」 そう言って、通話は一方的に切られてしまった。私は素早く状況が呑み込めず、戸惑ってしまった。 でも冷静になって考えてみれば、今の連絡は――多分、何かの手がかりが見つかったのだと思われた。電話で話すにはまどろっこしいくらい、重要な手がかりだろうか。 「僕はもう少しこの遺跡を調べてみるよ」 チェレンはそう言って、古代の城の中へもう一度、今度は一人で入っていった。一緒に来てくれていたアデクさんは、私が受けたアララギ博士の話を聞いて、じゃあ先にシッポウシティへ向かっておるからの、と言って先に向かった。 そして直ぐ、私もアーケオスの空を飛ぶでシッポウシティへ向かった。 「待ってたわ、……早速だけど、これを見て」 シッポウ博物館には、ベルと、シッポウジムのジムリーダーであり博物館の館長であるアロエさんと、私を呼んだアララギ博士と、アララギ博士のお父さんと、先に来ていたアデクさんがいた。 そしてアララギ博士から私に差し出されたのは、黒い鉄球のようなものだった。 「これはまさか……ダークストーン、ですか?」 「……ええ、恐らくは」 見た瞬間、ざわりと私の心の奥で何かが色めき立った。 ――でもそれは、その黒い塊が本当にダークストーンでゼクロムなのだとしても、何かの声ではなかった。ただの、直感でしかなかった。 「ねえ……本当に、いいの?」 「何がですか?」 アララギ博士は、難しい表情をして私に訊いた。 差し出されたダークストーンを受け取ろうとした手は途中で止められ、私は問いの意味が判らず困惑する。 「これを受け取ったら貴方は本当に……色々なものを、背負う事になるわ。貴方にしか託せない事だけど……大丈夫? 本当に」 アララギ博士の困った表情。アロエさんの心配そうに私を見る視線。 私は皆の視線から少し外れるように、足元にいるツタージャを見下ろした。ツタージャは私の視線に気付かずダークストーンを見つめていたけれど、やがて気付いて私を見上げた。 私はツタージャの瞳を見つめて――こくりと、頷いた。 視線を上げ、今一度アララギ博士と向き直る。 「はい。大丈夫です」 私が此処まで来たのは偶然じゃないし、なあなあでもないし、流された結果でもない。私は私なりに迷いながら悩みながら、道を選んで歩んできたつもりだ。 一人ではなく――ツタージャや、他のポケモンと一緒に。 「確かに見たところ、大丈夫そうだね」 「あ、チェレン!」 古代の城をもう少し調べると言って残ったチェレンが、丁度そこで現れた。 様子からすると古代の城でゲーチスが言っていた通り、手がかりになるものは何もなかったらしい。 「。君は今も、ポケモンの声が聞こえなくちゃいけないって、思ってるかい?」 予想だにせぬチェレンの問いに、私は目を見開いてまじまじと彼を見た。 確かに――私のこの旅の目的は、出た理由は、昔のようにポケモンの声が聞こえるようになる為、だけれど。 何故今――唐突に、そんな事を。 「君は……ポケモンの声が聞こえなくなってショックを受けてるって言うか、聞こえなくなった自分に負い目を感じてるみたいだけど、必要なのはそう言うのじゃないって、思ったんだ」 私はただ、チェレンの言葉をじっと聞くしかなかった。 事実、私の今までの考えはチェレンの言う通りだった。気付かない内に聞こえなくなった声と、聞こえなくなった原因が判らなかったが故に、私の何かがポケモンとの繋がりを切ってしまったのではないかと思った。 声が聞こえない以上、私の解釈は合っているのかと、全く自信が持てなかった。 でも――今は。 「必要なのは言葉じゃない。言葉が通じても、理解出来ない事は沢山あるよ。僕ら人間同士は、正にそうじゃないか」 言葉が――通じても。気持ちが全て、伝わる訳ではないから。間違って捉えてしまう時もあって、必ずしも思っていた通りに伝わるとは限らない。 そして――言葉が通じ、理解して貰ったからと言って、全てを受け入れて貰える訳でもない。 言葉が判っても通じても、争いは生まれてしまう。 「そうね。アーティさんも言ってたよね。一人一人考え方が違うって。それはきっと、人間もポケモンも変わらないんじゃないかなあ」 今度はベルが、チェレンの言葉を引き継ぐように語った。私は二人の話にはっとさせられた。 私とチェレンとベル。同じ年で同じ町で生まれ育った幼馴染。なのにそれぞれ性格も考え方も行動力も違う。同じ部分も多いのに、違う部分も同じくらい多い。 此処までずっと一緒だったけれど、それでも私はチェレンやベルの全てを知っている訳では多分ない。チェレンもベルも、私の全てを知っている訳ではないと思う。 「それに私なんか、中々言葉に出来なくてあわあわしちゃうけど、とチェレンはいつも判ってくれるじゃない。ね?」 「……そうね」 言葉が――あろうと、なかろうと。伝えられようと、伝えられなかろうと。 大事なのは、言葉じゃない。必要なのは、そう言う能力じゃない。 ポケモンの声が聞こえても聞こえなくても――聞こえ、なくなっても。気持ちまで通じなくなった訳じゃ、ないから。 「一緒に此処まで来たから、ツタージャの言葉が判らなくても気持ちが判るようになったんだって、私も思う」 言葉がなくても、その仕草や瞳を見ただけで。 全ての考えが判る訳では決してないけれど。ツタージャが私に何かを伝えようとしてくれれば、私がそれを判ろうとすれば――互いが、判るものだと知った。 「アララギ博士。ダークストーンを、私に下さい」 「……判ったわ」 そうしてアララギ博士から受け取ったダークストーンは、不思議な重さを持っていた。 この中に――いや、この石が、ゼクロム。Nと一緒にいたレシラムと対を成す伝説のポケモン。 あとの問題は――どうやってゼクロムを、目覚めさせるか。どうすればゼクロムに、私の気持ちが伝わるか。 この――命の暖かさを持つ、石に。 .Back ( top ) Next ( 後書き ) 何かいい感じに纏まってきたなあと思います。 最初は本当、出だしの思いつきしかなくて書き始めましたけど、 何とか終わりそうで安心してます。 ストーリーは特に改変せず、普通に終わると思います。 BWは特に解釈とかありませんからねぇ。 初代は無口な主人公が何故R団を潰しに行ったのかとか、 考えると妄想が膨らみますけど(笑) |