問題は――どうやってゼクロムを、ダークストーンの状態から目覚めさせるかだった。見つけられたのはいいが、目覚めてくれなければどうにもならない。 誰か知っていそうな人でもいればと考えたところで、アデクさんに思い当たる人物がいるようだった。 伝説によれば、ゼクロムとレシラムはドラゴンタイプを持つポケモンらしく、ドラゴンポケモンについてなら、ソウリュウジムのジムリーダーが何かを知っているかも知れない、と言う事だった。 話はそれで纏まり、アデクさんは取り敢えずNを止めてみると言って、ポケモンリーグへ戻っていった。 そして私は今、ソウリュウシティへやって来ていた。 結論から言うと――ソウリュウジムジムリーダーであるアイリスは、何も知らないとの事だった。 いや、個人的にはそれよりも正直、ヒウンシティで出会ったアイリスがまさかソウリュウジムの――イッシュ地方最後のジムリーダーを務めているとは知らず、とても驚いた。 でも――紛れもない、事実らしい。彼女は幼いながらにドラゴンポケモンと心を通わせ、戦うのだと言う。 子供だからと――舐めてかかってはいけない相手だった。 当然、実力を全てぶつけた、つもりだった。 ――でも。 「負け……た?」 相手はドラゴン使い。私の主戦力であるツタージャは草タイプ。 一方的に相性が悪かった。でもそんな相性の悪さなんて、今までにも撥ね退けて勝ち進んできた筈だった。 ――なのに私は、私達は、負けた。 圧倒的な強さを見せつけられるような、負け方だった。 「……ツタージャ?」 直ぐにポケモンセンターへ行って治療して貰い、ジョーイさんからもう大丈夫ですよとポケモン達の入ったモンスターボールを返して貰った。 しかしどう言う訳か、ツタージャのモンスターボールがボタンを押しても反応しない。いや、カチッと言ういつもの音はしているし、一瞬赤い光がボールから漏れるけれど、まるで途中でキャンセルされているみたいに、モンスターボールが開かない。 つまり、ツタージャが出てこない。 「負けちゃったのが相当ショックだったみたいね」 ジョーイさんに相談すると、困った様子でそう教えてくれた。一応モンスターボールをこじ開ければ外へ出せるには出せるらしいけれど、それはなるべくしない方がいいとの事だった。 ツタージャの命に関わるようなら、その手段に出なければならない。でももう少しツタージャが自分で出てくるように説得してみてと言われた。 「ツタージャ……貴方は十分、戦ってくれたわ。今回負けたのは、私の作戦ミスよ。貴方はいつも通り、全力で私に応えて戦ってくれた……」 いつも私は、ツタージャに助けられてばかりだった。ツタージャなら負ける筈がないと、過信し過ぎていた。絶対的な強さは、ないのに。 寧ろツタージャは進化していないその小さな姿で、戦っているのだ。勝てない敵がいても――何ら、不思議ではない。 それでも力不足を補って勝利に導くのが、本来私の役目だった筈だ。 なのに私は、ツタージャが次に欲しい指示を出すだけで、自分で勝つ為の作戦を余り考えた事がなかった。 私は――甘えていた。 「今度は、私が貴方の背中を押すわ。だから……もう一度、私にチャンスをくれない?」 モンスターボールは動かなかった。 私はそれ以上何も言わず、じっとモンスターボールを見つめた。すると――モンスターボールが、かたり、と動いた。私ははっとして、じっと見やる。 そしてぱしゅ、と音を立ててツタージャがモンスターボールから出てきた。 「ツタ……」 「ツタージャ!」 私の目の前に立ちながら、ツタージャはいつになく申し訳なさそうにしていた。視線に落ち着きがなく、そわそわしている。 私はしゃがんで、ツタージャの視線と合うようにした。 「ほら、ツタージャ」 手を差し出し、首を傾げてツタージャの様子を窺う。 私は今まで何度もツタージャに背中を押され、手を引っ張って貰っていた。でも本当に対等でありたいなら――今こそ、今度こそ、私がツタージャの小さな手を、引いていかなければ。 「一緒にいこ」 ツタージャに手を伸ばすのは、これで二回目。 初めて――ツタージャと会った時が、一回目。そして今が、二回目。 此処からが、再スタート。 立ち止まったならまた歩き出せばいいだけの事。立ち止まっても寂しくない。私達は、独りじゃないから。 「……ツタ!」 小さな手が、私の掌に重ねられた。私はその小さな手を、大事に大事にゆっくりと握り返す。 私が笑えばツタージャも笑う。私が歩けばツタージャも歩き出す。私達は共に旅するパードナー。 別れる訳にはいかない。 だからこの先も―― 一緒に居続ける為には。 手を合わせて力を合わせて、進まなければならない。 .Back ( top ) Next ( 後書き ) 何番煎じと言われようと……! ツタージャの小さな手が好きです。 そして進化していけば行く程小さくなっていくと言う……。 ツタ子はプライドが高いので、多分ちょっとした負けでも相当凹むんでしょうね。 |